ケープホーン − チリ 2002年2月17日−


 それからの数日を、何と言えばいいのだろう。ブエノスアイレスを出港した翌日、いまだに出入港の手続き等を手伝ってくれるシッピングエージェントが決まっていない状態とは・・・。決まっていない原因には、各シッピングエージェントの利権が絡んでいた。ブエノスアイレスを出港した時はブエノスアイレスのシッピングエージェントが、自分の子会社をぜひ使って欲しいということだったので、私達もそうしようと思っていた。しかし、チリで使う予定のエージェントがすでに動いており、船側と寄港の際の段取りをすでに組み始めていた。先乗り(現地に入っているうちのスタッフ)と連絡を取りたくても、南米最南端の海域だけあって衛星電話もとぎれとぎれでよく聞き取れない。どうにか今の状態を説明し、すでに次の寄港地・アルゼンチンのウシュアイアに現地入りしていた先乗り隊に全てを任せることにした。エージェントと打ち合わせた結果、私たちの船はこのままチリの領海内に入り、ホーン岬遊覧をし、その後チリ領の最南端の村・ポートウィリアムズの沖合に停泊、そこでチリの出入国をし、終了したらアルゼンチンのウシュアイアに向けて出港する、という手筈になった。
 


 一気に出入港が二カ国も増えてしまった。私以外のほとんどの人には大した影響は無いかもしれない。が、それゆえにホーン岬を全ての人に見てもらいたかった。
これがホーン岬!!命をかけた戦い。

 明けて2月17日。外はいよいよ寒く、手袋がないとかじかんでしまう。ドレーク海峡の向こうに南極があるのだと実感する。午前7時。まわりには重そうな霧が立ちこめている。「そろそろホーン岬だ」と船長がつぶやく。そんな!こんなに苦労しているのに、乗客にホーン岬を見せることが出来ないなんて!!「ホーン岬は天気が安定していないから見えない確率も高い。やめた方がいいんじゃない」的なことを言っていたエージェントの顔が浮かぶ。でも、みんなが楽しみにしていたポイントの1つだからこそ、予想外のお金も労力もかけてここまできたのだ。あまりのショックに涙がでそうになった。

 ここがホーン岬、というところで船は汽笛を鳴らした。あの霧の向こうに、ほんの800m先にホーン岬がある!ああ、そんな・・・。泣きそうな私たちを見てか、船長は天気が回復するまで一時間ほどここで停泊するという。そうだ、てるてる坊主を作ろう!私の作るてるてる坊主はいつだって、効果絶大なのだ。どうしてそんな大事なことを忘れていたのだろう。私は急いで部屋に戻り、1つのてるてる坊主を作ってブリッジにつるした。
二重丸が船の位置。

 するとどうだろう!!停泊して数十分、てるてる坊主をつるして間もなくすぅーっと霧が晴れたではないか!!「あれがホーン岬だ!」ブリッジで歓声が上がる。船長以下、誰もの顔が笑顔になった。ブリッジの下でも乗客がその方向を指さして、抱き合って喜んでいる様が見えた。ああ、あれがホーン岬なのだ。くやしくてこらえていた涙が、喜びに変わり、頬を伝った。今ままでの不安と、これからの苦労のかいがあるような気がした。しばらくホーン岬を周遊した後、私たちの船はフエゴ島のポートウィリアムズに向かった。



ポートウィリアムズ − チリ 2002年2月17日−

 ポートウィリアムズは、世界最南端の村だという。残念ながら喫水(船の深さ)が足りず、港につけることはできなかったので、その沖合に停泊した。ホーン岬からポートウィリアムズまでは美しいフィヨルドが続く、ビーグル水道を通る。切り立った崖の間を縫うようにして船は進む。このビーグル水道をさらにのぼると、次の寄港地・アルゼンチンのウシュアイアへと到着する。ウシュアイアに向かう手前でチリ領海内に入ったことによる出入国手続きを行うのだ。こんな時本当に国境なんかなくなればいいと思う。

 2月17日16:00、ポートウィリアムズに到着。パイロットボートにてチリのイミグレーションとシッピングエージェントが二名、乗船してきた。いよいよウシュアイア出港までの48時間耐久レースのはじまりだ。この48時間内に、「チリ入国・出国->アルゼンチン入国・出国」の手続きが行われるのだ。

 いつものように手続きが始まったが、12時間以内の滞在ということで、手続きは到って簡単に終了した。すぐに終了したことにほっとする間もなく、二時間後にアルゼンチンのイミグレーションが乗船してきた。これはウシュアイアに入港するまでの12時間で、全員のパスポートにスタンプし、アルゼンチンの入国を済ませてしまうためだ。国によっては入国手続きにまる一日、あるいは二日かかることもあり、その場合は前の港から乗船してもらうことにしている。特に南米は提出書類もたくさん在り、チェックすることもたくさんあってとても時間がかかるのだった。乗船してきた入管は、かわいいオンナノコとオトコノコ、といった感じの男女二名。夕食後の20:00からドニエプルラウンジにて手続きを始めることにした。事前の打ち合わせでは一晩かかる、ということだったが、24:00前には終了、せっかく早く(いや、充分夜中だけど!)終了したので、屋台へと誘った。オンナノコの方が英語がカタコトできたからだ。二人ともウシュアイア在住で、町にはあまり娯楽はないという。今流行っているというJapanese Styleのバーで飲むことは、考えられない娯楽だそうで、大喜びだった。そんな二人と一時間ばかり飲んだ後、出港の準備にかかる。日付が変わり、2/18、2:00に本船はポートウィリアムズを離れ、ウシュアイアのパイロットポイントへと移動をはじめた。

モドル

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